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「研修、どんなことするのかしら?」
 ふいに『美登里ちゃん』から話しかけられて、信一は、へどもどした。二次元の美少女相手になら、いくらでも大胆になれるのだが、3D、つまり三次元の世界に住む生身の女の子と話すのは、極度に苦手だった。
「さ、さあ。僕も初めてだから……」
「みんなで寄ってたかって、一人の人を吊《つる》し上げるようなことするって、聞いたことあるけど……」
「えっ。それって、『地球《ガイア》の子供たち』で?」
 ぎょっとして、彼女の顔をまじまじと見る。
「ううん。ふつうの、会社の新人研修なんかでやるやつ」
 信一は、ほっとした。
「……どうかな。ここじゃきっと、そんなことしないと思うよ」
「そうね。たぶん」
 彼女の横顔には、どこか憂いが漂っているように見えた。
「『美登里ちゃん』は……」
 そう言いかけてから、あわてて口をつぐむ。しまったは、もう遅かった。『美登里ちゃん』は、しばらくぽかんとしていたが、左手で口を押さえながら、のけぞるようにして大笑いした。
「何それ?……おかしい。わたし、ミドリなんて名前じゃないわよ」
「いや、ちょっと、ほかの人と間違えて」
「へーえ? でも、そんなハンドル?ネームの人、いたっけ?」
「いやまあ、深く追求しない」
 信一は、耳たぶまで赤くなるような気がした。
「わたし、『トライスター』よ。ちゃんと覚えといてね」
「あ。……うん。僕、君とチャットしたことあるよ」
「そうでしょ。『サオリスト』さん」
「えっ」